平成20年度は、第一に研究実施者がH17年末に実施した大学教員を対象としたアンケート調査の統計的分析を論文としてまとめ、論文誌「大学評価・学位研究」にて発表した。分析では、研究者の研究生産性を論文数ならびに自己評価の二つの指標で示したうえで、それらを目的変数として、研究者個人の意欲や交流などの要因と、組織・制度的な外的要因がどれほど影響するか重回帰分析および共分散構造分析により分析した。その結果、教員の研究意欲や研究交流が直接的に影響し、組織的要因はそれに対して間接的な影響を有するという多段階の構造であることが示された。 第二に、Science Citation Index(SCI)による論文データ、および国立大学の学部・研究科ごとの研究費等のデータを基にした分析を行った。本年の分析結果としては、SCIでは法人化以降の大学の論文数および、引用数のランクごとの論文数の分析をまず行い、法人化後に顕著な動向の変化は確認されず、1995年以降の傾向を継続していることが示された。研究費のデータからは大学単位の分析結果と、学部・研究科を単位とする各分野での分析結果との相関が高く、大学ごとの研究費獲得能力の差がそれに属する学部・研究科単位での能力と整合的である構造である現状が示された。 第三に、英国、豪州、オランダなどの大学の研究評価において先進国とされる諸国での新たな評価システム形成の状況について情報収集を行った。英国REF、豪州ERAともに当初の方向性からシフトし、informed peer-reviewを基礎とするシステム構築へと展開しており、このようにシステム形成の議論を不安定化させる要因について検討を行った。
|