研究概要 |
本研究課題では, ユビキタス・ラーニング環境において, 学習者の利用するデバイスの特性に応じた教材を提供するシステムの構築を目的としている. 昨年度は, デバイスの論理的特性を個々のデバイスが利用される学習形態とみなし, 個々の特性ごとにあらかじめ定義されたコンテンツを教材データベースから取得するシステムを構築した. しかし, 学習者がその時点で要求する教材は学習形態だけでなく, その時点の理解状態にも依存する. そこで, 本年度は学習者の理解状態を考慮した教材を提示するシステムを構築した. 本年度は英文法の学習に焦点をあて, 英語の短文穴埋多肢選択問題をコンテンツとして利用した. 効果的に文法知識を学習するためには, 学習者の理解している文法知識を基準とし, 理解していない文法知識を加えた文法集合から構成される英文を用いた問題を, 順に提示していくことが望ましい. そこで, 英文の文構造と英文中に含まれる文法知識を基に問題間の知識の包含関係を特定し, 解導出ネットワークとして構造化した. 一方, 短文穴埋多肢選択問題を解答する際, まず英文の文法構造を理解して穴埋箇所の品詞を特定し, その後品詞の中で穴埋箇所に適した形式を選択する. したがって, 学習者の選択した解答の正誤とその品詞を見ることで, 学習者の理解している/していない知識が推定できる, そこで, 学習者の解答と問題に含まれる知識から, 学習者の理解している/していない知識を特定し, 学習者モデルとして表現する手法を提案した. 特定した学習者の理解状態に応じて解導出ネットワークを探索し, 適切な問題を提示するシステムをWeb上に構築した. Web上に構築することで, あらゆるデバイスからアクセス可能となる. 本システムを用いた評価実験の結果, ランダムに問題を提示するシステムと比べて, 実験前に理解していなかった文法知識の理解の向上に有効であることが明らかになった.
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