研究概要 |
本研究の目的は, 学習効果が最大となるような検出性能をもつ英文添削システムを実現することにある. そのため, システムの誤り検出精度/誤り検出率と学習効果との関係を, 被験者を用いた実験によって明らかにする, 具体的には, 仮説1 : 学習効果が最大となるのは検出精度/検出率共に100%より低いところである 仮説2 : 検出率よりも検出精度のほうが学習効果に与える影響は大きい の二つの仮説を実験により確かめる. その後, 得られた知見を基に, 学習効果が最大となる誤り検出性能を備えた英文添削システムを実装する. 今年度は, 研究計画に従い, 上述の仮説を検証するために本実験を行った. 具体的には, 被験者26名に対して, 英文添削システムを使用して自由記述英文を書かせるという実験を行った. 収集したデータを整理, 分析したところ次のことが明らかになった. 精度重視のシステムの学習効果は, 人手による添削で得られる学習効果に近いことが明らかになった. このことから, 添削対象の学習者が多く, 人手による添削が困難であるときは, 積極的に精度重視のシステムを使うべきであるとの知見が得られた. また, 検出率重視のシステムでは, 添削情報なしの場合より学習効果が低い結果となった. これは, 検出率重視のシステムでは, 誤検出が多く, 学習者が混乱したためであると予想される. この結果から, 添削システムは, 検出率より検出精度を重視すべきであると結論づけられる. 以上より, 仮説1については成り立たない結果になったことになる. ただし, データ数がそれほど多くないので, 最終的な結論を出すためには, 引き続き研究が必要であるといえる. 一方, 仮説2については, 仮説通りの結果となったことになる. なお, 本研究過程で得た英文データを公開する予定である. 以上のとおり, 計画通り平成20年度の研究を実施することができた.
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