研究概要 |
本研究では,既存の言語処理技術・言語資源を有効活用することで,用例検索・提示および産出文の検証に主眼をおいた多言語作文支援ツールを構築する.提案ツールは,機械翻訳のようにシステム主導の支援ではなく,あくまで学習者が主体となり,自発的・訓練的に作文を行うための情報提示が目的である. 本年度は,以下の項目に対して研究を実施した. 1) 言語の特徴を考慮した柔軟な検証法の考案と実装 算出文の妥当性を検証するn-gram検索では,誤りの候補を検できるが,その訂正方法を支援することができなかった.そこで,n-gram検索の結果を基に,ユーザが試行錯誤しながら誤りを動的に訂正できる機能を実装した. 2) 用例の自動抽出・提示法の改良 Webコーパスは基本的に単言語コーパスである.しかし,作文には対訳コーパス(パラレルコーパス)が有用な情報源となる.そこで,CiNiiのAPIを利用し,日英・英日の対訳用例を提示する機能を実装した.日英以外の言語についても同様な情報源があれば同じ手法が適用可能である. 3) ログの活用 学習者の履歴情報(検索キーワードや検索結果など)は,ユーザ毎の学習データと見なすことができるため,この情報を分析することで各ユーザの学習を支援するための有用な情報が得られる可能性がある.そこで,入力ログを活用したサジェスト機能を実装した.サジェスト機能を利用することで,作文時の試行錯誤を支援できる. 以上の成果は,学術論文1件,国際会議2件,研究会1件,その他(全国大会など)2件で発表し,提案手法の有用性と今後の課題について整理した.
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