世論調査や意識調査など、学生が身近に接する調査の技法についての理解を促すことは、高等教育における研究・学習の基礎的スキルの育成として、またキャリア教育の観点からも重要と考えられる。本研究では、質問紙調査やインタビュー調査などの社会調査スキルの育成を目的として、情報技術を利用した学習支援システムの開発と、これを活用した大学での授業実践の評価を行った。実践研究では、社会調査スキルを育成するための授業デザイン方法について検討することも目的とした。 本年度の本研究計画は、大きくは2つの要素に分けることができる。第一の「システム開発・拡張」では、前年度のプロトタイプ版を元に、調査票作成を支援する「調査票作成・相互回答支援システム」、インタビュー調査の学習を支援する「インタビュー動画オンライン共有システム」の拡張を行った。第二の「システムを利用した授業実践研究」では、20年度前期・後期学期に1科目ずつ、社会調査スキルの育成とシステムの評価を目的とした授業実践を、大分大学での教養教育科目として実施し、各授業(合計2科目)で試行的評価を行った。 実践研究では、前期(約140名受講)、後期(約20名受講)の各授業で、両システムの実践的評価を行った。授業デザインやシステムのカスタマイズが与えた影響は、現在、検討を進めているが、相互評価における事前知識の重要性が示唆される結果となった。また、19年度の後期学期に開講した授業(約90名受講)の質的評価を進め、調査票作成・相互回答支援システムを用いて、学生がいかに質問内容(問い)を深化させていくかの過程について検討し、学生で相互に評価させることの有用性と困難性を確認した。動画システムについては、自らのインタビュー時の映像の振り返り(リフレクション、再吟味)や、収録すること自体が、自身の学習に対して肯定的な影響を与えていることが明らかになった。今後、続く授業実践も含めて研究成果を整理する予定である。
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