世論調査や意識調査など、学生が身近に接する調査の技法についての理解を促すことは、高等教育における研究・学習の基礎的スキルの育成として、また、学士課程修了後を視野に入れたキャリア教育の観点からも重要と考えられる。本研究では、質問紙調査やインタビュー調査などの社会調査スキルの育成を目的として、情報技術を利用した学習支援システムの開発と、これらを利用した大学での授業実践を実施し、評価を行った。 本研究は、大きくは2つの計画に分けることができる。第一の「システム開発・拡張」では、調査票作成を支援する「調査票作成・相互回答支援システム」と、インタビュー調査の学習を支援する「インタビュー動画オンライン共有システム」の開発・拡張を行った。第二の「システムを利用した授業実践研究」では、社会調査スキルの育成とシステムの評価を目的とした授業実践を大分大学での教養教育科目として4科目実施した。また、システム評価も含めた授業として2科目を実施し、合計6科目を通してシステムの適用範囲の可能性を検討した。 これらの研究成果の一部は、雑誌論文をはじめ、国内学会、国際会議等で報告を行っている。成果としては、第一に、授業とシステムの利用によって、調査票における質問内容(問い)の深化の支援が可能になったことが挙げられる。第二として、とくにインタビュー動画オンライン共有システムでは、自らのインタビュー時の映像の振り返り(リフレクション、再吟味)や、収録すること自体が、自身の学習に対して肯定的な影響を与えていることが明らかになった。現在、本研究の中核となる部分の成果を学術論文として投稿の準備を進めている。また、これらの成果を元に、09年度も新たな授業実践を実施しており、さらなる発展を目指している。
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