研究概要 |
本研究は、インストラクショナルデザイン(ID)の自動化(AID)を指向した2種類の教材シェルの開発を通して、AID研究の整理, 教授トランザクション理論(ITT)のシステムへの実装, AID化に関わる諸条件の整理を行うことを目指した. 本研究の教材シェルとは, IDに基づく教授方略アルゴリズムを実装し, 知識データを分離することでデータを入れ替えられる, 内容の専門家(SME)でも利用可能なシステムを指す. 平成20年度(最終年度)の主な研究成果は, 以下の3点に集約される. ・AID研究の整理については, 研究成果が学術論文に掲載された. 日本ではID研究が立ち後れており, そのツール研究はほとんど紹介されていなかった現状において, AIDに関する研究を整理して公表できたことは, 今後のeラーニング研究等にも役立つと考えられる。 ・ID理論として複数提案されているドリル制御構造をシステム上に統合した, ドリル型教材シェル「ドリル工房」について, その成果が認められ, 学術論文に掲載された. また, ドリル工房を一般にも利用してもらうためWeb公開し, 実用の段階へと進めることができた. ・ITT教材シェルについては, 学習環境とオーサリング環境の両方についてシステム開発および改善を行った. 特に構成要素のトランザクション(同定・実行・解釈)で提案されているすべての方略を実装した. ITTで提案されている方略等の複雑さを解消するためにインタフェースを工夫した. また, 抽象のトランザクションの一部(判断・分類)でも簡単なプロトタイプを開発した. 構成要素のすべての方略を実装した既存システムは存在しておらず, 実装を通して理論で提案されていた内容を, より具体化することができた.
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