具体的内容今年度は、青年期における高次読解リテラシーの形成を評価する方法および高次読解リテラシーを支える要因について検討した。ここでの高次読解リテラシーとは、文章を読解する際に、学習者が自ら(a)推論をさまざまに立てる、(b)問題解決策をたくさん思いつく、といった認知的行為を指す。 評価法の検討 高次読解リテラシーと従来の教科学力との関係を確認するため、全国の国立大学附属小・中学校の通知表(1993年・2003年)の記述から、国語科学力観を取り出す分析をおこなった。その結果、わが国の国語科教育で、通知表レベルで想定されている学力観は、既有知識・技能を適用し推論的に考える、という点で、高次読解リテラシーと部分的に対応していることが示された。 要因の検討 大学1年生50名を対象に、質問紙調査を行い、その記述の分析から、高次読解リテラシーに関連する要因を検討した。調査では、(1)専攻する専門分野、(2)彼らが用いる文章読解方略、(3)文章生成に対する彼らの信念、(4)生成された文章、などのデータを収集した。分析の結果、(a)大学生として共通する読解方略や信念がある一方、(b)専攻分野によって、違いがあることが明らかとなった。(b)については例えば、文系学部所属の学生は、読解・生成のいずれにおいても、文章の内容を重視するが、理系学部所属の学生は、文章のスタイル(見やすさなど)を重視する傾向があることが示された。 意義および重要性 意義および重要性は以下の2点。(1)学校教育段階で形成される学力の姿と、それ以降の教育段階において、どのような学力が想定されるべきかが明らかにされた点。(2)初年次教育段階において、専攻する分野による違いが既に見られることから、文科系・理科系と専門が分化していく後期中等教育において、共通点(文章構成に関する知識を形成し、実際に意識する)を重点的に指導していく必要があることが示された点。
|