本研究の目的は、学習者の状態に適応するeラーニングシステムの開発である。そこで代表者が所属する機関の学生300人を対象に現状の電子教材に関するアンケートを行ったところ、(1)復習時よりも教室での理解支援、(2)プログラミングなど演習系科目の支援、を要求していることがわかった。これらの結果から、当初想定していたビデオカメラ等での学習状態把握は、教室での演習系科目の適用には適さないと考えられる。そこで今年度は、キー入力や手の動きといった動作方面からの学習状態を把握に着目した。 まず、テキスト入力用辞書を自動生成するシステムCaIMEを開発した。このシステムでは、学生がどの資料を開いたかという動作を利用し、そのノートを取るのに適したIME辞書を自動的に生成する。ノートを取る時間を短縮して講義に集中できるため、内容の追随が容易になる。 次に、教師が行う自然な動作から、講義の要約を自動的に生成するシステムWBlogを開発した。このシステムでは、教師が板書で重要な箇所に行うキーワードのハイライトを利用し、それを見出しとしたWebコンテンツを自動生成する。重要な箇所だけが整理され、講義全体の把握に役立つ。 また、理解促進につながる補足情報を自動提示するチャットシステムGaChatを開発した。未知の情報が提示された場合は他者への質問が発生するという集団の学習状態を利用し、コミュニケーション中の固有名詞の画像や定義を同時に提示することで、合意や理解促進につながる。 演習系科目への適用に関しては、次年度の課題である。入力キーの直接収集は倫理面で問題があるため、手や体全体の動きを計測できるシステムの開発に着手した。
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