本研究の目的は、学習者と講師の状態に適応するeラーニングシステムの開発である。20年度は、19年度の成果のまとめと、その知見をもとにした新たなシステムの開発・発表を推進した。 「講師の板書から講義要約を自動的に生成するシステムWBlog」は、情報処理学会論文誌に採録された。同様に、「理解促進につながる情報を自動提示するコミュニケーションシステムGaChat」は、国際会議に採録された。 講師の状態に適応するシステムとしては、WBlogの機能を拡張して動画像に対応させた。このシステムは、固定カメラで撮影した講義の動画から板書の見出しを抽出し、Webページとして再構成する。学習者は、見出しの画像をクリックすると、動画中の該当箇所に容易に移動できる.人手をかけることなく、高度な編集がされたコンテンツを自動的に作り出すことができる。 同様に、WBlogの手法を電子スライドにも拡張させた。このシステムは、プログラミング講義のPDFスライドから、アニメーション効果を付与した動画を自的に生成るこのアニメーションは、iPodのような小さな画面でもプログラムの流れを理解しやすいよう調整されている。これにより、いつでもどこでも演習系の科目が復習できる環境が実現できる。 WBlogの成果は教育以外の分野にも転用された。紙媒体上にボールペンや付箋紙でつけたマークを扱う知的活動支援システムは、JSTシーズ発掘試験の開発課題に採択された(関連発表3件)。このように、19年度の成果は当初の計画を超えて大きな発展をしつつある。 学習者の状態に適応するシステムとしては、マウスの挙動から講義資料の注目されている箇所を検出・視覚化するシステムを開発した。このシステムは、実際のプログラミング講義で運用され、合計46万件のデータの中からさまざまな興味深い知見を得た。この成果を発表した学生は奨励賞を受賞した。
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