本年度はラテン語解剖学用語の変遷についての調査から開始した。 ラテン語解剖学用語の調査においては、『モンディーノ解剖学』、アレッサンドロ・ベネデッティ『人体誌あるいは解剖学』、ヤコブス・シルヴィウス『ヒッポクラテスおよびガレノス生理学の解剖学的部分に対する梗概』の電子テキスト化を行い、現在はヴェサリウス『人体構造論』の電子テキスト化も行っている。特にシルヴィウスの著作ではガレノスによるギリシア語の名称とシルヴィウス自身が新たに加えた名称が混在しているため、ガレノスに遡って解剖用語をリストアップする必要があることが分かった。現在、ガレノスの解剖学書に現れる用語とそれに対応する16世紀におけるラテン語用語について調べている。その他、16世紀から18世紀にかけての主要なラテン語解剖学書および医学辞書に現れる名称のリストアップを進めている。 西欧の解剖学用語の調査を進めるうちにラテン語解剖学用語の変遷が目本語解剖学用語にも影響を与えていることが明らかになった。ラテン語の名称の変遷の裏には個々の構造についての認識の変化があり、その隠れた認識の変化が日本語の用語に見て取ることができた。そのため、日本語解剖学用語と照らし合わせることでラテン語の用語について新たな視点を持つことができると判断し、日本語解剖学用語についても調査を行った。 日本語解剖学用語に関しては、江戸時代の『解体新書』『重訂解体新書』の解剖用語を原語とともにリストアップした。明治時代の種々の解剖学書および医学辞書に現れる名称の調査を行っている。また学会主導による用語の制定についても調査を行った。眼科学会などの他学会における用語の制定と比較をしながら統一的な日本語解剖学用語の誕生課程について検討した。
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