研究概要 |
日本における標本製作技法の発展を明らかにするために,平成19年度は鳥類標本の製作技術が持ち込まれた1800年代の鳥類学術標本を所蔵している北海道大学北方生物圏フィールド植物園に赴き,保管されている鳥類標本についてラベルや目録などから剥製の製作年代や詳しい資料が残されているか調査を行った。また国立科学博物館に残る1800年代の鳥類学術標本も同様に調査を行った。その結果,北海道大学北方生物圏フィールド植物園に残されている標本についてはT.W.ブラキストンの収集した標本がラベルと共に状態もよく保存されており,製作年や採集者が明らかなものも含まれていた。これらブラキストンが収集した標本のうち初期の標本について内部構造を精査し日本に持ち込まれた鳥類標本の製作技術を明らかにするため,CTを用いて標本のスライス画像を得るため貸し出しを依頼した。 ブラキストン標本についてCTを用いて内部構造を精査するにあたり,国立科学博物館に残されているもっとも古い鳥類標本20個体についてまず調査を行った。その結果,標本内部に残されている骨や針金,木片などを撮影することができたが,綿や紙といった材質のものははっきりと判別することができなかった。また撮影された断層図を元に標本の内部をパソコン上で立体化したところ,さらに骨の位置や骨の切断面,芯となる針金の位置などを詳しく記録することができた。標本内部の残された骨の形状や材料などから現在の技術と異なる点もいくつか見られ,今後ブラキストン標本を精査することによってさらに詳しく製作技術の変遷が明らかになると考えられた。さらに時代を追って斎藤報恩会や国立科学博物館に残された標本を調べ,その製作者を特定することでどのような技術がその後受け継がれたのか明らか出来るだろう。
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