本研究課題の初年度にあたる平成19年度には、イタリア・トスカーナ州における有機・減農薬農業について、概括的な調査を実施した。特に、有機・減農薬農業に係るコンヴァンシオンのあり方と、それに支えられたツーリズムの現状について、特に重点的に調査した。第1回目の渡航は、夏休み期間中(平成19年8〜9月)に1ヵ月ほど実施した。関係する行政機関や図書館等をそれぞれ訪問して、統計・資料類の収集や既往文献等を渉猟した。第2回目の渡航は、平成20年3月(春休み期間中)に3週間ほど実施した。この時には、第1回目に引き続き資料類を収集したほか、有機・減農薬農業とアグリツーリズムを兼営する複数の農家を訪問し、詳細な聞き取り調査を実施した。 統計・資料類の収集や有機・減農薬農家への聞き取り調査にあたっては、有機・減農薬農産物に係る収益性の検討と認定基準の変遷について、特に重点をおいて実施した。イタリアの農業政策は独自性が強いうえ、EU旧加盟国の中では中進国にあたることから、CAP(EU共通農業政策)においても特殊な政治的配慮がなされてきた。農業政策の変化は、有機・減農薬農業の動向にも大きな影響を及ぼしたものと推測される。また、政策の変化に伴う認証基準の変化も、産地の動向を明らかにするうえで無視しえない。さらに、複数の品質認証機関が並立し、それぞれの認定基準が微妙に異なっている。こうした点に特段の注意を払うことによって、イタリアにおける有機・減農薬農産物のコンヴァンシオンがどのように形成され、また変化を遂げてきたのかを明らかにしようと試みた。
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