本研究では災害時における中山間地域の脆弱性を明らかにしながら、どのような点に考慮すれば持続的な復興につながるのか考察することを目的として、当該年度は次のようなことを行った。 まず年度全体を通して新潟県中越地震の被災集落へ訪問、復興状況について現地把握を行った。また新潟県庁、市町村等行政機関において統計等関連資料の収集を行った。 現地調査では、震災発生前の集落における意志決定、活動には限界がうかがわれ、新しい発想、枠組みによる取り組みが始まりつつある傾向がみられた。集落の役員を中心とした議論、意志決定から女性や若者など集落全体の声を反映させるしくみづくり、本家、分家など家制度の打破、震災直後に駆けつけたボランティアとのつながりの強化、都市交流等による新たな外部支援者の発掘などである。こうした新しい人材発掘の試みは、1月に行った台湾集集地震から復興した集落における調査でも確認された。 その一方で、震災発生当時は同じ集落で生活していたものの、従来から存在する集落で現地再建を行った世帯と震災を契機に離れた世帯との心理的な距離を十分に縮めるには至っていない部分もうかがえる。こうした物理的な距離と心理的な距離との関係は阪神・淡路大震災ではあまり顕在化しなかった現象である。 3年間の住宅再建状況を調べると、冬期間以外の建築着工数が多い反面、集落における復興に関する議論は冬季に活発化することがよみとれた。積雪地域等では季節について考慮したハードとソフトの復興計画、活動を検討することが必要である。
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