本研究では災害時における中山間地域の脆弱性を明らかにしながら、どのような点に考慮すれば持続的な復興につながるのか考察することを目的として、当該年度は次のようなことを行うた。 研究は新潟県中越地震の被災集落へ訪問、復興状況について現地把握を中心に行った。また新潟県庁、市町村等行政機関において統計等関連資料の収集を行った。 特に今年度は、災害発生時における義援金配分の実態と課題について把握、検討を行ってきたが、従来の広く被災者(被災世帯)への見舞金という性格からある特定の被災者層や地域等空間的な広がりに対して配分する形へ変わりつつあるとともに、被災者への行政支援制度と重複する要素のあることが明らかとなった。 取り上げた地震災害の事例は、一都道府県に収まる規模が多かったものの、義援金取り扱いの根拠となっている地域防災計画における位置づけ、記載内容、実際に災害が発生した際の義援金配分などが都道府県により大きく異なっていることは、今後の発生が懸念される東海、東南海、南海地震など広域型災害が発生した際には、同じような被害状況であってもその災害義援金の配分対象、配分方法、配分金額等には被災都道府県により違いが生じる懸念がある。 また大規模な災害になれば義援金募集期間も長期となり、配分機会も複数回になる。発生初期(避難生活等応急対応期)の配分内容と時間が経過した復旧期、復興期における配分内容は意味が異なってくる。迅速性を優先させて初期には統一基準による配分を行い、一定期間後は多様性を考慮した配分内容とするなど柔軟性、多様性など義援金の特性をふまえたうえで、義援金に関する固定観念の転換と復興支援制度のしくみの改善まで視野に入れた検討を行うか広範な議論が必要である。
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