研究概要 |
海域や湖水域に面して発達する扇状地はファンデルタ(fan delta)や臨海扇状地と呼ばれる. 日本列島は湿潤変動帯に属し, 激しい地殻変動や頻繁に起きる豪雨のため, 土砂生産量が大きく, 地形も急峻である. その結果, とくに中部山岳地域から太平洋・日本海に流出する黒部川や富士川, 安部川, 大井川, 天竜川などの河口付近にファンデルタが発達する. 地形と堆積物を結びつけ, ファンデルタの発達を解明することが本研究の目的である. 研究対象地域として天竜川下流部を選定した. 今年度は, 昨年度に引き続き, 河口から約5km上流の天竜川左岸側において, 深度65mに達するオールコアボーリング(TR2)を実施し, 堆積物を採取した. 採取したコア堆積物について, 詳細な記載, 色調測定, 層相解析, 軟X線写真撮影, 粒度分析(泥分含有率の測定), 加速器質量分析計を用いた放射性炭素年代測定をおこなった. その結果, 以下のことがわかった.堆積物は, 昨年採取したコア(TR1)と同じく, 下位から大きく砂礫層, 砂泥互層, 砂礫層からなっていた. 上位の礫層は, TR1コアに比べて厚かった. また, 年代測定の結果から, 10500 cal BP-7000 cal BP頃までは, 1000年当たり10m程度の大きさで堆積物が累重したことがわかった. この堆積速度は7000 cal BP以降に比べて著しく高いことが推定された.堆積速度の変化は, 融氷にともなう海水準上昇速度変化に規定されていると考えられる.
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