氷床コアからすべての不揮発性微粒子を取り出す新たな解析手法(氷昇華法)を確立した。-50℃の低温室環境で閉鎖系の試料箱に入れられた南極の氷試料に-65℃の露点温度を持つ乾燥空気を送り込んで氷を昇華させる手法である。この手法を用いて、ドームコアの各深度の氷1gに含まれる不揮発性微粒子500個の微粒子を抽出してSEM-EDSによって個々の微粒子の元素分析を行った。その結果、従来は数十の塩微粒子組成データを集めるのにやっとであったが、数百のデータを容易に集めることができるようになり、母比率の信頼性が飛躍的に向上させることができた。このデータを用いて、ドームふじコアのほぼ全層にわたり塩微粒子の組成と溶存イオン濃度の間の相関関係を明らかにし、逆にイオンバランスとイオン濃度から主要な塩微粒子組成を推定し、過去のエアロゾル組成を復元する新たな手法を論文として提示した。 また、イオン濃度の高分解能解析の成果として、ドームふじコアのNaイオン濃度データから過去の南極周辺海域の海氷面積を復元する新たなデータ解析手法を論文として発表した。ドームふじ地域の過去30年のNaイオン濃度とインド洋と大西洋セクターの海氷面積の間に優位な正の相関があることを明らかにした。この結果を利用して、ドームふじコアのNaイオン濃度から完新世の数十年スケールの海氷面積変動を復元した。その結果、気候最適期の海氷面積変動はその後の寒冷期の変動に比べて規模が小さかったことを復元した。
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