研究課題
氷コアに含まれる代表的な塩を推定する方法を提案した。硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、硝酸塩、塩化物塩の順で優先して塩を形成するとし、陽イオンと陰イオンの濃度の許す限り上述の優先順で形成できると仮定すると、推定された塩の主成分はラマン分光器で同定した塩の主成分とよく一致した。このことから、ある時代に含まれている塩の主成分をイオン濃度から推定できることを示し、イオン濃度プロキシーの古気候復元への応用性が増した。この一致は南極・北極両者のコアで見られ、塩を推定する手法が地球規模で幅広く応用できる。一般的には北極は南極に比べて陸域起源物質の寄与が大きく、両極とも寒冷期は温暖期に比べて酸の寄与が少ない。近年30年間の南極内陸のナトリウムイオン濃度の短周期変動と南極海の海氷面積の季節変動と対応していることを示した。その結果に基づいて、完新世のナトリウムイオン濃度の短周期変動が南極海の海氷面積の季節変動と対応していることを提唱し、季節変動レベルで分析されたナトリウムイオン濃度を解析した。その結果、南極のヒプシサーマルの時期はそれ以後のやや寒冷な時期に比べて、海氷の季節変動幅が小さく、冬季に現在ほど北上していない可能性を示唆した。氷床コアからすべての不揮発性微粒子を取り出す新たな解析手法(氷昇華法)を確立した。この手法を用いて、ドームコアの各深度の氷1gに含まれる不揮発性微粒子500個の微粒子を抽出してSEM-EDSによって個々の微粒子の元素分析を行った。その結果、塩微粒子組成データの信頼性を飛躍的に向上させることができた。
すべて 2008
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北海道大学低温科学研究所技術部技術報告 14
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