研究概要 |
本年度はまず,ノア衛星画像を用い,ロシア極東地域で毎年発生している火災煙を検出する方法を開発した.本方法では地表面の影響による誤検出をなるべく少なくするため,ノア17号に搭載されている1.58μm帯のチャネル3Aと近赤外のチャネル2から正規化土壌指数を求めてしきい値処理を行った結果,陸域の火災煙と雲との区別が容易になり,昨年度提案した方法と比べて単純な条件で検出が行えるようになった.次に,ノア衛星画像の位置合わせ処理に必要となる海岸線検出方法を開発した.海岸線の検出では,前処理として検出に不要な領域の除去が必要である.中野らによる従来法ではこの不要な領域を除去するために雲域除去を用いていたが,この方法はチャネル3B,4,5を使用しているため,チャネル3Bを使用できないような比較的新しいノア衛星の画像には適用できない問題があった.提案法ではこの問題を解決するため,正規化植生指数を用いて,予め海岸線の検出に用いない部分を除去するようにした.その結果,海岸線の検出に必要なチャネル数を従来の計5チャネルから2チャネルに減らすことに成功した.海岸線の検出に必要なチャネル数を減少できたことで,従来法と比べ,より多くのデータに対して海岸線の検出を行えるようになった.最後に,ロシア極東地域で発生する焼け跡と火災煙の複合的な解析を行った.その結果,焼け跡は毎年4月と10月に多く,火災煙は5月に多いことが分かった.理由は10月の火災で発生した焼け跡は,すぐに冬場を迎えるため,焼け跡の植生が回復しないままとなり,翌年4月に雪が融けて前年の焼け跡がそのまま現れるからである.また,火災煙の解析から,5月に植生が回復するとすぐに,前年とほぼ同じ地域で火災が発生していることが分かった.以上により,前年10月の焼け跡は再度火災が起きやすく,翌年5月に警戒すべき地域であることが分かった.
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