実施した研究概要 本年度は、多重管拡散デニューダーのガス吸着能ならびに超微小粒子の通過効率試験を複数の管数に対して行い、高流量により超微小粒子の慣性分級を行うインパクターフィルター(慣性フィルター)に適した多重管デニューダーの選択をまず行った。さらに、次年度においては、この多重管デニューダーと慣性フィルターを接続した系にて大気観測を行う計画にしていることから、本年度はその基礎試験として、インパクターフィルターのみによる超微小粒子の分級と観測を実験室レベル(燃焼実験装置とディーゼル発電機を使用)、ならびに、実大気空間(都市部道路近傍と高層ビル上階)にて行い、超微小粒子の空間分布と成分組成の把握を行った。 得られた成果 多重管拡散デニューダーのガス吸着能ならびに超微小粒子の通過効率試験において、インパクターフィルターでは40L/minの高流速が必要であり、超微小粒子の通過には有利に働くためにほぼ問題ない効率を示した。ただし、拡散によるガス吸着は流量の影響を大きく受け、実大気観測の長期使用においては、3チャンネル以上(5チャンネルが最も望ましい)の多重管拡散デニューダーを使用する必要性が示唆された。一方、超微小粒子の分級と観測においては、まず、実験室的な燃焼実験から、粒子成分の発生源による違いが超微小粒子域に顕著に現れることを確認した。その上で、実大気観測を都市部道路近傍と高層ビルで行い、超微小粒子成分について以下を明らかにした。 ・道路近傍での主要成分は炭素成分であるが、季節別の不均一核形成の作用により有機炭素成分は異なる。 ・冬期は自動車排ガスの影響を強く受けるが、夏期は、光化学二次生成由来の粒子が混在する。 ・発癌性を有する多環芳香族炭化水素(PAH)の割合は、超微小粒子域で高く、冬期はそれが顕著になる。 ・超微小粒子は拡散性が高く、高層ビルの下層から上層へ顕著に拡散移流する。
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