本研究は、共鳴多光子イオン化法を用いた分子選択的な実時間分析によって、揮発性有機化合物(VOC)など有害成分の各種発生源からの放出特性を詳細に把握し、大気環境への影響評価に活用することを目指す。申請時の研究計画にしたがい、平成19年度には以下のことを実施した:(1)2台のレーザー光源を同期制御し、複数成分の同時・連続的な実時間分析を実現した。試験的に、原付排気のベンゼンとトルエンを同時に実時間分析した。その結果、両成分間に非常に高い相関が見られ、放出過程の類似性を確認した。発生源での複数成分同時分析と相関解析により、放出特性に関する知見が得られると期待される。(2)多様な成分・発生源について、個別に放出特性を調査した。発生源として、原付排気、自動車排気、塗料や溶剤からの蒸気、たばこの煙、の各試料を試験した。成分としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、フェノール、クレゾールを中心に、実時間・分子選択的に定量分析した。その結果、分析を行った発生源および成分ごとの濃度と放出フラックスについて、平均値だけでなく秒単位での詳細な変動も捕捉した。異性体ごとの秒単位の濃度変動など、従来法では把握できなかった正確・詳細な放出特性データを得られた。次年度(20年度)には、得られた放出特性データを詳細な相関解析および環境影響評価に活用し、条件(発生源の種類、車の運転状態や塗料の塗り方など)と環境影響の関連を調べる。これにより、環境面から優先的に対策すべき課題を判定するための知見が得られると期待される。
|