黒ボク土と褐色森林土の2種類の森林土壌と、黒ぼく土と同じ地点から採取した難分解性のカラマツ落葉と易分解性のササ葉試料、褐色森林土と同じ地点から採取した、比較的分解しやすいと思われる広葉樹落葉の3種類の植物試料を用いた。森林土壌に落葉を混合した後、窒素源あるいはリン源のいずれかを添加して培養し、フェノールオキシダーゼ活性およびβ-グルコシダーゼ活性の経時変化を調査した。 黒ぼく土では、リン含量の低いカラマツ落葉を混合した場合、窒素やリンを添加するとβ-グルコシターゼ活性が増加する傾向が認められた。フェノールオキシダーゼの場合は、リン添加でのみ活性が増加した。一方、ササ葉の窒素含量はカラマツ落葉に比べて低いにも関わらず、β-グルコシダーゼ活性は窒素添加によって増加しなかった。またリン添加の影響は認められなかった。フェノールオキシダーゼの場合は、窒素、リンいずれの影響もみられなかった。ササ葉とカラマツ落葉を同時に土壌に加えた場合、両者の結果から予想される以上に両酵素とも活性が高まり、異なる性質の植物リター混合による微生物への相乗効果が推察された。 褐色森林土の場合は黒ぼく土と異なり、カラマツ落葉混合土壌にリンを添加してもβ-グルコシダーゼ活性に有意な影響は生じなかった。本研究で用いた褐色森林土の可給態リン濃度は、黒ぼく土のものと同等であったため、この差異は両土壌間の微生物群集の違いによることが示唆された。他方、ササ葉、広葉樹落葉を添加した土壌では、窒素・リンのいずれの影響も見られなかった。さらにフェノールオキシダーゼの場合は、落葉の種類や窒素・リン添加のいずれの処理にも関わらず活性はほとんど変動しなかった。 本結果より、植物リター分解に重要な役割を持つβ-グルコシダーゼとフェノールオキシダーゼ活性の制限要因は、植物リターの分解性や成分だけでなく、その土壌に生息する微生物群集により異なると判断された。
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