本研究の目的は、夜間大気において重要な役割を担っているNO_3ラジカルおよびN_20_5分子を計測する超高感度装置を開発することである。具体的には、実験室分光の一つの実験手段として、近年にその応用性を広げつつある、キャビティリングダウン(CRD)吸収分光法を用いた。NO_3ラジカルは662nm付近に、第一電子励起状態への電子遷移に伴う強い吸収バンドを有するので、その可視吸収に共鳴する色素レーザーを用いた。CRD法のメインとなる光学キャビティーの設計と組み立てを行った。非常に反射率(99.99%以上)の高い一対のミラーを、約0.5m程度離して設置し、光学キャビティーを構成する。片方のミラーの後ろから、NO_3の吸収の共鳴波長付近(662nm)の色素レーザー光を導入した。レーザー出力は1mJ/pulse程度であった。レーザー光は、光学キャビティー内で何百回も反射される。光学キャビティーからの漏れ出し光は、アパーチャによって背景散乱光を除去しつつ、光電子増倍管を用いで直接検出した。漏れだし光を高速ディジタイザで計測することで、信号の減衰速度(リングダウン時定数)を計測した。キャビティー内部に、NO_3が存在する場合としない場合とを比較した。NO_3が存在しない条件では、圧縮空気のみを質量流量制御器を経由して導入している。また本年度は、N_2O_5をNO_3に変換するための熱分解システムを構築した。試料ガスの導入口にリボンヒーターを巻きつけて、スライダックを使って電圧を制御し、355Kまで加熱できるシステムを構築した。
|