近年頻発する森林および泥炭火災により、熱帯泥炭湿地林は、温室効果ガスの吸収源から放出源となっていることが指摘されている。火災頻発の原因は、1995年からインドネシア・中央カリマンタンにおいて開始された大規模で人為的な地下水位低下による表層泥炭の乾燥化が大きいと考えられる。インドネシアにおいて1997年~2006年にわたる森林火災及び泥炭層火災により放出された二酸化炭素量は1.4~4.3Gtであると見積もられている。これは年間化石燃料による排出の19~60%を占める。本研究の一連の成果により、時系列の多時期衛星画像データを用いたフェノロジー解析により、泥炭層厚の推定および異常地下水位低下地の広域予知の可能性を示唆してきた。前者に関しては泥炭層の水文緩衝機能に着目し、水文季節性と泥炭層厚および地上森林フェノロジーとの関係性を明らかにした。後者に関しては、エルニーニョのような異常乾燥時の乾季における地下水位の大幅な低下が植生指数(NDVI)を大きく低下させることを明らかにした。予測泥炭層厚分布結果から中央カリマンタン泥炭湿地林における炭素蓄積量は約1Gt/Mhaであることが算出された。また乾季における植生指数低下量が標準偏差の3倍であれば、標準偏差の2倍の地下水位低下が予期できることを明らかにした。今後はパラモーター搭載の携帯型分光放射計による湿地林表層の反射率から植生指数を算出し、更なる泥炭層内情報の表面情報からの取得に関する研究を推進する。
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