研究課題
ツボカビは水生生物に寄生する主要な病原菌のひとつであり、植物プランクトンや動物プランクトン、両生類など幅広い生物に寄生する真菌類である。自然界に広く分布するといわれ、ツボカビが水界の物質循環のなかで重要な役割を担う事が明らかになってきた。ツボカビの寄生率に関する報告はあるものの、ツボカビの遊走子を含めた全体の現存量についての報告は皆無である。そこで、本研究ではツボカビの現存量、特に遊走子の密度を野外において定量化する事を試みた。千葉県の印旛沼のプランクトン計数データ(千葉県環境生活部水質保全課)を解析した結果、ツボカビの遊走子と同じサイズ分画(2-5μm)である未特定の鞭毛プランクトンが年間を通じて多く出現している事が明らかとなった。鞭毛プランクトンからツボカビのみを検出し、計数するには、特殊な観察方法が必要となる。そこで、微分干渉装置と蛍光装置を用いて、ツボカビだけを特異的に観察する方法を確立した。また、ツボカビを実験室で培養するシステムを確立した。さらに、ツボカビのDNAに特異的なDNAプローブを用いて計数する方法の開発を試みた。既存のツボカビのシークエンスデータを用いてプローブを作成できることが明らかとなった。来年度、本格的に野外の試料に適用し、ツボカビの密度測定の精度と効率の向上を図る。これまでの成果を2つの国際学会と3つの国内学会、および2つの国際誌論文として発表した。また、ツボカビに関する研究成果が評価され、日本生態学会宮地賞を受賞した。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
Proceedings of the Royal Society, series B 274
ページ: 1561-1566
Theoretical Population Biology 72
ページ: 264-273
http://marine1.bio.sci.toho-u.ac.jp/members/kagami/index.html