研究概要 |
環境水中に存在する微量元素の動態を解明することは,環境の保全や生体の安全を確保するために極めて重要な課題である.環境や生体に悪影響を与える有害元素は,海水や河川水などの環境水中にppt〜ppbレベと比較的低濃度で存在するにもかかわらず,環境や生体を脅かすには十分な量である.そのような極微量元素(特に有害金属イオン)の環境水中濃度を正確に把握するために,精度,感度,確度のよい測定方法を確立しなければならない.具体的には次の項目を達成した. (1)機能性分離・濃縮剤の開発:環境水中には高感度測定を妨害する高濃度なマトリックス成分と,測定目的の微量元素が共存しているため,測定前に高濃度なマトリックス成分を効率よく分離し,測定目的の元素を濃縮する必要がある.水溶液内の金属イオンの捕集に有効な親水性の高い有樹天然材料であるキトサン基剤に,キレート官能基としてアミノ基とカルボキシル基を有するアミノ酸を導入した分離・濃縮剤の新規合成に成功した.(2)分離・濃縮性能にかかわる吸着メカニズムの解明:測定目的の金属イオンを選択的に捕集することの可能な高機能な分離・濃縮剤を開発するために,キレート官能基近傍の立体障害が吸着性能に与える影響について詳細に検討し,分離・濃縮性能にかかわる吸着メカニズムを解明した.(3)簡易分析システムの試作:高濃度マトリックス成分の分離と,極微量金属イオンの濃縮およびその高感度測定を実現するために,ハイパフォーマンス簡易分析システムの試作を行い,その性能評価を実施した.環境水中のppbレベルの微量元素を測定するには十分な精度,感度,確度を有した簡易分析システム試作機の開発に成功した.
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