平成20年度は、これまでに開発したMODIS時系列解析手法をメコンデルタ全体に適用できるよう、パラメータ調製・アルゴリズムの書き換えを行い、2000〜2007年の農業的土地利用図の推定が可能になった。そして、中解像度(250m解像度)の空間情報と現地調査情報を比分析することにより、エビ養殖地の拡大過程を多年次で把握することが可能になった。具体的な研究結果は、以下の通りである。 1. 水稲作付パターンを分類するアルゴリズムと統合したことにより、乾季にエビ養殖をし、雨季に水稲栽培を行っている"Shrimp-Rice farming"を分類することが可能になった。推定結果における"Shrimp-Rice farming"は、Bac Lieu省Hong Dan県とSoc Trang省My Xuyen県に広く分布しており、既存の土地利用図や地調査結果と概ね一致していた。 2. 水文シュミレーションデータ及び衛星データ解析により、沿岸部におけるエビ養殖地と水稲栽培地は、灌漑水路・小河川を境界とした明確な区画分けが行われており、稲作地域では乾季の塩水遡上を水門操作によって灌漑の塩分濃度を低く抑え、エビ養殖地域では、遡上する塩水を灌漑水路に取り込むことによって、灌漑水の塩分濃度をを高していることが確認された。 3. 衛星データ解析において、2007年から新たにエビ養殖をはじめた地域の聞き取り調査を行った結果、灌漑水路中の塩分濃度が高くなったことによって、これまでのように水稲栽培を続けることができず、エビ養殖を始めざる得なくなった農家が存在していることが確認された。このように、灌漑水路の水門管理計画の変更によって、灌漑水路の塩分濃度変化し、エビ養殖地が付加逆的に拡している可能が示唆れた。 4. 本研究において開発されたMODIS時系列解析手法は、メコンデルタ以外の内水殖地域においても適用可能であり、内水養殖地開発に伴って変化する世界各地の沿岸部生態系の広域監視に役立つと期待される。
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