研究概要 |
これまでの研究で、微小大気粉塵に含まれるアンチモン(Sb)の濃縮係数が著しく高く、またその傾向は都市域ほど顕著であることがわかり、人為的なSbの発生源が環境に負荷を与えていることが明らかになった。Sbは現在のところ未規制物質であるが、有害性が懸念されている元素である。本研究では、いくつかのSbの発生源(自動車のブレーキダスト、廃棄物焼却飛灰など)に着目し、各発生源が環境に及ぼす負荷を評価することを目的としている。本年度は、自動車のブレーキダストに着目し、一般的な市街地走行時に排出されるブレーキダストの粒径分布、元素組成を明らかにし、排出量を試算した。 ブレーキダストの粒径分布(個数濃度)は、1,m付近にピークを持つことが確認された。これは、ブレーキダストが肺の深部に到達し、呼吸器系に悪影響を及ぼす恐れのある微小粒子として大気に排出されていることを意味する。また、ブレーキダストにはパーセントレベルのSbが含まれていることが確認された。これらの結果から、自動車の走行によって大気に排出されるSbの国内における一年間の総排出量を試算したところ、21トンであった。これらの結果は、ブレーキダストとして環境に排出されるSbの負荷を評価する際に活用される。
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