これまでの研究で、微小大気粉塵に含まれるアンチモン(Sb)の濃縮係数が著しく高く、またその傾向は都市域ほど顕著であることがわかり、人為的なSbの発生源が環境に負荷を与えていることが明らかになった。Sbは現在のところ未規制物質であるが、有害性が懸念されている元素である。本研究では、いくつかのSbの発生源(自動車のブレーキダスト、廃棄物焼却飛灰など)に着目し、各発生源が環境に及ぼす負荷を評価することを目的としている。本年度は、自動車のブレーキダストおよび廃棄物焼却飛灰の発生源寄与率および排出量を明らかにした。 過去2年間の助成研究で明らかにしてきた自動車ブレーキダストと廃棄物焼飛灰の発生源プロファイルを元に、大気粉塵(APM)の環境モニタリング結果をケミカルマバランンス(CMB)法で解析し、粒径別APM中のSbに対する発生源め寄与率を定量的に評価した。その結果、廃棄物焼却飛沫が微小APM中みSb、ブレーキダストが粗大APM中のSbの主たる発生源であることが明らかになった。両者の寄与の和によって、APM甲の全Sbの90%以上が説明された。また、廃棄物焼却飛灰およびブレーキダストに由来するSbの大気への排出量は、それぞれ約10トン/年および約20トン/年と見積もられた。上記見積もりの不確かさを考慮すると、両者の環境負荷は概ね均衡していると総括された。本研究で得られた成果は、環境中におげるSbの循環の一端を解明したもので、グローバルスケールでのSbの運命や生態系への影響を理解するための糸口を与えるものである。
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