研究概要 |
領域化学輸送モデル(CMAQ)とエミッション・インベントリー(REAS,ACESS)を用いて,東アジア域を対象としたモデル実験を行なった結果,特に春・秋の中国華北平原域において,モデルが大気汚染物質濃度を過少評価する事が判明した。これは,小麦等の農業廃棄物の野外燃焼(Agricultural burning)による影響をモデルがうまく表現できていない事に起因していると思われた。そこで,大気汚染物質の排出地点・時期をHotspotデータより解析し,従来使用しているAgricultural burning起源の年間排出データを利用して,詳細な時空間分布(daily)を持つ排出量データを作成し,2006年東アジア域を対象としたモデル実験を行ない,2006年6月の中国華北平原における大気汚染物質(CO、BCなど)の観測値との比較を行なった。その結果,Agricultural burningの影響と思われる高い濃度レベルの大気汚染が観測された際に,モデルによる物質濃度も増加する結果が得られた。一方,Agricultural burningの影響か少ない時期において,モデルによるCO濃度が大幅に過少傾向であることより,Agricultural burning起源以外の排出量が過少推計である可能性が指摘された。また、モデルは、Agricultural burning起源と思われる高い濃度レベルの大気汚染を比較的よく再現したが,大気汚染濃度を過小評価気味・高濃度イベントを再現出来ない事があるなど,まだ問題が残っている。そこで,今後,排出量推計手法の改良を進める予定である。
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