本研究課題において昨年度までに構築した、詳細な時間・空間分解能(時間:一日毎・空間0.5度)のバイオマス・バーニング起源のemission inventoryを利用して、2006年6月の中国華北平原を中心とする東アジア地域を対象とした領域物質輸送モデルシミュレーションを実施した。同時期に実施した華北平原中心部の泰山集中観測データと比較し、大気物質濃度の再現性を確認した。バイオマス・バーニングの日々の影響を考慮していないモデルシミュレーションと今回作成したdaily emission inventoryを用いたモデルシミュレーションを比較した結果、daily emission inventoryが、オゾン、CO、エアロゾル(BCとOC)濃度の再現性の大幅な向上に有用である事が示された。また、daily emission inventoryを用いた場合、モデルと観測の間の相関係数はr=0.54-0.66となり、バイオマス・バーニングの日々の影響を考慮していないもの(r=0.03-0.46)と比べて、非常に良い。月平均オゾン濃度も大幅に改善し、本研究は、東アジアの領大気物質輸送モデル予測精度の向上に成功した。6月の中国華北平原は、冬小麦収穫後の野焼きの影響で大気環境が悪化している可能性がある。daily emission inventoryと領域物質輸送モデルを用いた本研究では、6月上旬の華北平原の大気汚染物質濃度に対する野焼きの影響を定量的に評価した。一方、モデル実験・観測との比較研究は、モデル実験がCOとBC濃度を約2倍程度過小評価している事を示しており、さらに、この過小評価は、バイオマス・バーニング起源の排出量以外の要因によると指摘した。
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