研究概要 |
トキの餌として重要なドジョウやフナといった魚類は,川から水路・水田と移動し,水田を産卵場,水路を稚魚の生育場として利用する.そのため,河川-水路-水田間の繋がりが構造物等によって分断されている状態は,水田を利用する魚類そしてトキの採餌環境からも好ましくない.本研究では,川のネットワーク構造に注目し,ネットワーク構造の再生前,再生後(横断構造物の改良や水田魚道の設置)に,エレクトリックショッカーを用いた定量調査,ならびにICタグ(Pitタグ)を装着した魚類によるネットワーク内の移動状況を併せて解析し,ネットワーク再生による魚類の応答を,定性・定量的に明らかにすることを目的としている. H19年の春,調査河川下流に設置されている2つの横断構造物が,魚類が遡上できるように改良された.前年度,ネットワークが分断された状態で魚類の生息量調査を各季節に実施しており,それらのデータと対応するよう,同様の調査を行った.これまで構造物下流でしか確認されなかった1魚種が,この改良後に上流側で確認された.しかし,採捕個体数は少なく,改良の効果は限定的であった.また,魚類にICタグ(Pitタグ)を装着し,小流域内の移動について追跡調査を行ったが,改良前後で魚類の移動に大きな変化は見られなかった.そのため12月に,今回改良した構造物の再改良を行い,さらに川と水路,水路と水田が分断されている複数の地点に,仮設魚道を設置した.また,Pitタグ装着によるドジョウへの影響を検証する室内実験を行ったが,タグ挿入による影響は確認されなかった.
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