研究概要 |
トキの餌として重要なドジョウやフナといった魚類は, 川から水路・水田と移動し, 水田を産卵場, 水路を稚魚の生育場として利用する. そのため, 河川-水路-水田間の繋がりが構造物等によって分断されている状態は, 水田を利用する魚類そしてトキの採餌環境からも好ましくない. 本研究では, 川のネットワーク構造に注目し, ネットワーク構造の再生前, 再生後(横断構造物の改良や水田魚道の設置)に, エレクトリックショッカーを用いた定量調査, ならびにICタグ(Pitタグ)を装着した魚類によるネットワーク内の移動状況を併せて解析し, ネットワーク再生による魚類の応答を, 定性・定量的に明らかにすることを目的としている. 調査河川下流に設置されている2つの横断構造物が改良され, 魚類が遡上できるようになり、改良前には確認されなかったアユカケが、改良後の堰上流で確認された。しかし、採捕個体数は少なく、改良前後における各調査区(堰の上下流)の魚類現存量や密度、多様度指数に大きな変化は見られなかった。一方、水田魚道の設置により、魚道設置前にはまったく魚類が確認されなかった水田でドジョウの稚魚が確認され、水田魚道の設置による横断的なネットワークの再生の効果は明瞭に見られた。しかし、一般の水田では7月に中干しを行うため、再生産した稚魚も中千し後には大きく減少し、ネットワークの再生だけでなく、水田管理方法との調整が必要であることが示された。また, 魚類にIcタグ(Pi七タグ)を装着し, 小流域内の移動についてゲートアンテナによる追跡調査を行った結果降雨に伴い水位が上昇し、濁りが増すと遡上する傾向が明瞭に見られた。
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