研究概要 |
本研究は,極低濃度域の大気中揮発性有機化合物(VOCs:Volatile Organic Compounds)における個別化合物炭素安定同位体比の測定法を開発し,安定同位体比を利用した新たな発生源解析法を提案することを目的とし,平成19年度は気体濃縮器とGC/C/IRMSの融合・実験条件の検討と実際の自動車排ガス,ガソリンスタンド(ガソリン揮発)の発生源の特徴の把握を行った。 融合・条件検討の結果,VOCs36成分の炭素安定同位体比を測定することが可能になった。VOCs混合標準ガスの繰り返し分析による分析精度(標準偏差)は,Benzene,Toluene,Ethlbenzene,m,p-Xyleneでそれぞれ0.18‰,0.23‰。0.21‰,0.18‰となり,またその他のほとんどの物質も0.10〜0.50‰以内となった。安定同位体比に関する既往の文献と比較しても,すべての物質において最も高精度の測定結果となり,本研究の方法は発生源解析を行う上で有利な方法であることがわかった。 さらに自動車排ガスとガソリンスタンドの結果では,ホットモードの排ガスはコールドモードに比べ,すべての物質で0.61〜2.9‰重い同位体比を示すことがわかった。また6物質においてガソリンスタンドよりも自動車排出ガスの方が0.88〜3.8‰重くなる傾向を示すなど,特徴を有していた。さらに交差点など比較的高濃度域の一般環境においても測定を行ったが,安定同位体比の特徴を利用することで,ガソリンスタンドと自動車排ガスのどちらの影響が大きいのかを区分することが出来た。
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