研究概要 |
本研究は支笏湖沿岸域における小型移入魚種の生態系に与える影響を調査する目的でおこなった。本年度の報告として,はじめに沿岸域における小型魚種の個体群の年変動および食性調査の結果を示し,後半に2006年6月から2007年6月における底生動物群集,藻類量,有機物量の季節変動の結果を示す。 沿岸域における小型魚種の個体群は2007年6月から10月の間,夏(7月)と初秋(9月)に高密度を示したが晩秋にかけ低くなり温泉付近の調査地以外では冬期ではほとんど確認出来なかった。魚類群集の種構成はヌマチチブが62%,ヨシノボリが27%,フクドジョウが7%,アメマスが3.6%を占めており,沿岸域の在来種密度は著しく低い事が明らになった。特に,在来種であるエゾカジカは本調査の3地点で全く確認出来なかった。各魚類群の体長は著しい年変動を示さない事より,沿岸にはある一定の齢の魚類が生息場所として利用する事が推測される。移入魚種の食性は,藻類が約80%,動物群が約20%を占める事より,肉食性よりも草食性の傾向が高い事が明らかになり(ただし,フクドジョウ等はより肉食性の傾向を示す),その動物群では約30%を水生昆虫,70%をミジンコ等の動物プランクトンを利用していた。これより,ヨシノボリやヌマチチブ等の小型移入種はアメマスやエゾカジカの在来種に比べ高密度で棲息し(個体集で約20〜8倍),沿岸域の生態系にとって藻類を主とした一時生産を大量に搾取している可能性があると示唆される。 沿岸域の二次生産の一指標である底生動物群集の季節動態は春(4月)に総種数,個体数,現存量のピークを示し,藻類量の季節変動と似た動態を示した。しかし,湖畔から流入する落ち葉等の有機物量の年変動はCPOM(粒径1mm以上)とFPOM(1mm以下)とも周期性を示さず底生動物群との関係示されなかった。これより,沿岸域の底生動物群集は藻類の影響を受けている可能性が高い事を示した。
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