研究概要 |
1.地球温暖化による豪雨発生頻度への影響評価 PCMDIより入手した12全球気候モデルの計算結果を用いて長江流域における地球温暖化による確率降水量への影響を評価するとともに,100年確率の降水が発生したときの長江のピーク流量の変化を検討した.長江流域では地球温暖化によって現在気候よりも豪雨の年生起回数が有意に増加し,100年確率降水量は現在気候と比べて2050年では1.02〜1.68(平均1.28)倍,2100年では1.09〜1.69(平均1.37)倍に増加すること,洪水ピーク流量は現在気候と比べて2050年では1.29〜1.60(平均1.39)倍,2100年で1.28〜1.75(平均1.47)倍になることが明らかになった. 2.海域の流動・水質・生態系モデルの高精度化 陸域から流入した汚濁負荷物質の海域における輸送・拡散を的確に評価するため,移流スキームにCIP法を導入した準3次元流動FEMモデルを構築した.国内フィールド(東京湾・伊勢湾)に適用したところ,水温・塩分濃度の鉛直分布の再現性は良好であり,本モデルの有用性が認められた.構築した流動モデルに水質・生態系モデルを組込み,東京湾の水質の再現計算を行ったが,本モデルでは東シナ海でも見られる躍層周辺に形成される赤潮ブルームをうまく表わすことができなかった.これについてはモデルの構造を再検討する必要があり,今後の課題である. 3.長江流域における水・栄養塩流出モデル及び河口・沿岸海域の流動・水質・生態系モデル構築に必要な情報のデータベース化 長江流域の水文・水質データや統計資料,及び長江河口・沿岸域の海岸線・海底地形,赤潮・貧酸素水塊発生状況など本研究の遂行に必要なデータを収集するとともに,それらをGISソフトを用いてデータベース化した.
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