前年度構築した宜昌より上流の流出モデルに宜昌から河口までの低平地対象とした不定流出モデルを結合し、長江流域の雨水流出モデルを構築した。昨年度と同様にPCMDIの12GCMの降水量データを用いて地球温暖化による下流域の河川流量の変化を数値シミュレーションで検討したところ、100年確率の洪水ピーク流量は2050年では現在気候の1.46倍、2100年で1.54倍になり、上流域よりも洪水氾濫リスクの高まりが大きいことが明らかになった 構築した長江流域の雨水流出モデルをベースとし、収集した水文・水質データを用いて長江流域の汚濁負荷流出モデルの開発に着手した。河口に位置する上海都市圏の点源負荷及びその周辺地域の農業由来による面源負荷が全負荷量の大半を占めていたため、これらの詳細なデータがモデルの精度向上には不可欠であることが明らかになった。 前年度構築した海域の流動・水質・生態系モデルを東シナ海に適用したところ、東シナ海陸棚域における表層塩分濃度の季節変化を概ね再現した。また、本モデルを水質データが蓄積されている伊勢湾に適用し、気候変動が湾内環境に及ぼす影響を検討した。その結果、湾内底層の有機物濃度の長期変動傾向は風向・風速の経年変化と関連している可能性が高いこと、風向・風速による湾内水質への影響は降水・河川流量の変化と同等以上であることが明らかになり、地球温暖化による海域環境への影響を検討する際には河川流量・汚濁負荷量のみでなく、風向・風速の変化を考慮することが重要であることが示唆された。
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