研究概要 |
本研究では,CO_2に加えてメタン(CH_4)や亜酸化窒素(N_2O)などの微量物質を含めた大気一陸域生態系間の物質交換を扱うモデルの開発を行った。それには非常に多数の要因・過程を考慮する必要があったので,最初は過去の研究における手法を参考にすることから各過程の定式化を開始した。次に,現地調査や最近のフラックス観測から得られた物質収支データを利用して精度の向上を図ることによって,研究期間内で効率的なモデル開発が可能になった。従来のモデルでは,扱う物質の種類や適用できる生態系の種類が限られていたが,本研究では様々な物質交換を単一のモデルで統合的に扱うことができ,森林から草原・耕作地まで多様な生態系に適用できる一般的モデルの構築を行った。つまり,空間的スケールをプロットスケールから地域スケールへと拡張するボトムアップ的手法が採用された。モデル開発を効率的に進めるため,既存の土壌物質動態モデル(CENTURY、DNDC、CASAなど)の定式化を参考にしつつ,観測データに基づく修正を加えた。森林生態系におけるCO_2、CH_4、N_2O収支については,土壌によるメタン酸化をRidgewellスキーム,CASAスキームにて,土壌からの亜酸化窒素の放出をNGAS schemeとCASA schemeにて岐阜大学高山試験地に適用し,陸域モデル(VISIT)に導入済みである。さらに,植生からのメタン放出(Keppler, et. Al.,2006;Kirschbaum, et. Al.,2006),嫌気的土壌のメタン生成(Walter,et al.,2000)を拡張し,湿地や水田にも適用できるようモデルの改良を行った。また,亜酸化窒素放出のプロセスの精度の向上を図った。
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