前年度からのモデル開発を継続して、陸域生態系の温室効果ガス交換を一通り推定するモデルを完成させ、そのモデルの広域スケールの応用を試みた。つまり、モデルを日本・アジア域、グローバルに展開し、陸上生物圏全体として大気組成との相互作用をモデル解析した。具体的な数値実験として、過去および将来の長期時系列気象データをモデルに入力して陸域ガス交換の季節変動や年々変動のシミュレートを行った。広域的なモデルシミュレーションの検証材料として、大気組成の観測データとの比較を行った。このような研究は主にCO_2に関して行われてきており、本研究においてメタンなどの微量物質についてそれを行うことで独創性のある寄与を行うことができた。グローバルスケールの実験では、全陸域からの温室効果気体収支が推定されることになり、観測でも不確定性が大きいとされるメタンや亜酸化窒素の収支に関するモデル研究からの寄与ができた。これらは炭素、窒素、および生物起源物質のグローバルな生物地球化学的循環を解明する上で非常に有意義な研究になった。まとめとして、拡張された陸域モデルのシミュレーション結果に基づいて、大気一陸域生態系間の相互作用における、CO_2およびそれ以外の微量温室効果ガスの寄与を評価を行った。それは、主にCO_2に注目して行われている現在の観測やモデル研究を補完し、より現実的な生態系から大気へのフィードバック効果の推定につながった。
|