本研究の目的は、個人の負担増を伴う施策受容に市民参加の手続きがどの程度効果があるかを明らかにすることである。誰しもが便利さや快適さを追求したく、ごみの分別や処理費用の負担などはしたくない。しかし、個人が自己利益を追求した結果、社会全体として負う負担が増加するという社会的ジレンマ問題がある。これに対し、現実には制度設計による問題解決が求められるが、住民の負担を増やすような施策は躊躇されやすい。また、トップダウンで政策決定をしても多くの住民に受け入れられず、実効性が低くなってしまうこともある。こうした問題に対して、社会心理学における手続き的公正感の観点からのアプローチが有効であると考えられる。 本研究では、市民参加のプロセスを手続き的公正感の観点から捉え、いかなる市民参加の手続きをとれば、社会的受容につながりやすいかを検討する。その題材として、賛否が拮抗するごみ有料化問題を取り上げた。有料化導入前後でどのように社会的受容が変化するのか、それに市民参加手続きがどのように影響を及ぼすかを追跡調査する。札幌市において、有料化導入前の賛否や手続き的公正感などの評価について無作為抽出による社会調査を行った。 その結果、実際に市民参加の場に参加していない市民でも、市民参加の参加者が市民の代表だと認められ、その参加者全員が発言でき、また、そこでの意見が施策に反映されていると評価できれば、手続き的公正感が高まり、社会的受容につながることが明らかになった。さらに、ごみ有料化に反対している人でも、同じように市民参加の場を評価できれば、手続き的公正感が高まり、ひいては社会的受容につながることが明らかになった。一方、ごみ有料化だけを争点としてしまうと、個人的負担感と衡平感が主要な規定要因となることも示された。
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