研究課題
本研究の目的は、個人の負担増を伴う施策受容に市民参加の手続きがどの程度効果があるかを明らかにすることである。誰しもが便利さや快適さを追求したく、ごみの分別や処理費用の負担などはしたくない。しかし、個人が自己利益を追求した結果、社会全体として負う負担が増加するという社会的ジレンマ問題がある。これに対し、現実には制度設計による問題解決が求められるが、住民の負担を増やすような施策は躊躇されやすい。また、トップダウンで政策決定をしても多くの住民に受け入れられず、実効性が低くなってしまうこともある。こうした問題に対して、社会心理学における手続き的公正感の観点からのアプローチが有効であると考えられる。本研究では、市民参加のプロセスを手続き的公正感の観点から捉え、いかなる市民参加の手続きをとれば、社会的受容につながりやすいかを検討する。その題材として、賛否が拮抗するごみ有料化問題を取り上げた。有料化導入前後でどのように社会的受容が変化するのか、それに市民参加手続きがどのように影響を及ぼすかを調査する。札幌市において、フィールド観察を行いつつ、有料化導入直前の賛否や手続き的公正感などの評価について無作為抽出による社会調査を行った。フィールド調査より、有料化導入直前の2ヶ月には通常には出されないような大量のごみが廃棄されたこと、直後には違反ごみが少なかったことが確認された。しかし、導入後しばらくたつと、雑紙の中に段ボールが多く混入して、処理に支障を来すなどの問題も生じてきた。社会調査からは、市の職員が誠実に対応していると評価するかどうかが手続き的公正感の主要な規程要因となることが明らかになった。さらに、市民意見交換会や町内会説明会などの開催を知っていたり参加したことがある人ほど、誠実さや手続き的公正感のみならず内容評価なども高く評価し、社会的受容に繋がりやすいことが明らかになった。
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Journal of Environmental Information Science 38(3月刊行決定)
環境社会心理学研究 9
ページ: 1-249
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