本研究の目的は、社会ネットワーク分析を適用し、レブンアツモリソウの保全をめぐる関係主体間の関係がどのように構築され、あるいはどこで途切れているのかを定量的に把握することである。本年度は、昨年度から実施しているアンケート調査および聞き取り調査の結果を整理し、社会ネットワーク分析を適用した。レブンアツモリソウの保全をめぐっては、保全の鍵を握る人物が複数の分野にちらばっており、特定のカリスマ的な人物に全ての情報や権力が集中しているわけではないこと、つまり分散型のネットワーク構造を持っていることが明らかとなった。しかしながら、研究者についてはその他関係者と他の分野間のつながりが相対的に希薄であること、観光業者に関してはつながりがほとんど存在しないことが明らかとなり、今後の保全に向けてより緊密な関係構築の必要性が示唆された。また、レブンアツモリソウを保全するためには、種の保存法に基づいていくつかの会議が設けられ、多くの関係者が保全のための議論に関わっているが、会議に参加している人物同士の結びつきが強いわけではないこと、またネットワークにおいてハブの機能を果たしている人物の中にも、このような公式の場に関与していない人物がいることが明らかとなった。これらの知見は、実際の保全の現場に存在するネットワークと、法的に位置づけられた管理システムがカバーしている人物にはズレが生じており、効果的で効率的な保全を行う上で、改善の余地があることが明らかとなった。
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