研究概要 |
本研究では, 循環型社会を形成する各行動主体の意思決定に着目し, どのような意思決定がどういった社会を導くのかというメカニズムを明らかにし、社会的に受け入れられ、かつ、持続的に発展可能な循環型社会の構築のための制度を提案し、実社会で実現可能性についての評価を行うことを目的に研究を進めている. 本年度は, 被験者実験設備において, 種々の意思決定主体から構成される仮想的な社会を構築し, 実験経済学の手法をもとに被験者実験を行った. それに加えて, 被験者へのアンケート等を実施することで, CO2排出量などの環境意識と経済的意思決定の関係性について, 心理学的な視点から分析した. これらの実験対象者としては, 学生だけではなく環境問題に関連する部署で勤務する会社員に対しても行った. 分析の結果として, CO2の排出量/削減量などの環境に関連する価値, すなわち, 公益に相当する評価に対しては, 自分の私益が深く関わらない範囲において環境を保全する客観的な意思決定を行うことができるが, プロスペクト理論が示すような損失の局面で被害を大きく評価しないことが明らかになった. さらに, 循環型社会システム実現のための制度設計の問題に関して, 昨年の成果や上記の被験者実験やアンケート調査で得られた知見を利用しながら分析を進めた. 具体的には, LCAを基にしたカーボンフットプリントを利用した制度としてモデル化し, 計算機実験や被験者実験を行った. 結果として, 環境配慮行動を実現する社会システムのためには消費者側にも日常生活で関連して排出するCO2の上限値を与えることで, 有効に機能する可能性があることが示された. 以上の成果をとりまとめ, 関連学会で公表等を行っている.
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