本年は本研究における最終年度であるため、研究成果の総括はもちろん、持続可能な発展のための今後の環境政策に関する研究を行った。 当初の研究計画に従い、第一にジェニュイン・セイビング指標(以下GS)の経路分析と持続可能性な発展のための政策的要素の特定化を行った。本研究は持続可能性の経済分析のために、富およびGSを指標に取り、その平均的動向のみならずトレンドならびに安定性といった視点を含めた分析枠組みを構築した。今年度はこの枠組みを更に発展させ、共和分分析とインパルス-レスポンス分析を用いていずれのターゲットが持続可能な発展において重要であり、公共政策として投資していくべき対象であるかを明らかにした。さらに、日本を事例に取り上げ、日本の持続可能性がどれだけ他国の持続可能性に依存しているか、あるいは他国の持続可能性を犠牲にしているかを計量経済分析によって明らかにした。これら成果は、国内外の学会で発表するとともに、世界の第一人者であるパーサ・ダスグプタ教授を招いたセミナーでも発表され、興味深い結論が導き出された。第二に、環境評価研究と整合的なシャドウプライスの測定を行った。世界銀行のデータベースWorld Development Indicatorsなどで提供されているGS指標は、自然資本の計算価格には市場価格から近似して計算されている。しかしながら、多くの研究で指摘されているとおり、この近似には問題があり、理論的に整合的な消費者余剰でシャドウプライスを測定する必要がある。そこで今年度は、統合評価モデルを用いてシャドウプライスを内生的に推定し、それを用いたGS指標の将来動向を測定した。ここでは将来シナリオを幾つか想定し、感度をチェックした。これにより、政策影響の将来的評価の基礎が提供された。この研究は光2010年6月の国際学会にアクセプトされ、本研究成果が発信される。
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