研究概要 |
本研究では,さまざまな社会・文化的条件のもと発生している獣害問題を対象に,農家の被害意識構造を解明し,それらを地域比較することで食害という生物学的現象に対して地域住民の被害意識が多様化する社会的要因を明らかにすることを目的としている.今年度は兵庫県篠山市のニホンザル農作物被害問題において被害農家の対策実行意欲に影響を与えている要因を明らかにするために、農業形態グループ別に共分散構造分析行った.その結果,被害農家の「対策実行意欲」は「被害頻度」に影響を受けず、「対策熟達度」や「営農意欲」「対策効果の体験」などの社会的要因の影響を受けていることが明らかになった。また、それぞれの社会的要因の「対策実行意欲」への影響力は販売農家と自給農家で異なっていた。販売農家の場合、「対策熟達度」、「営農意欲」の順で影響力が強く、自給農家の場合は「対策熟達度」の影響力が販売農家と比べて低く、また「営農意欲」「対策効果体験」もほぼ同等の影響力を持つ結果となった。被害農家の「対策実行意欲」を高めるためには、「対策熟達度」や「営農意欲」を高めることは農業形態にかかわらず有効であることが推察される。とくに自給農家の場合単に対策熟達度を高めるための情報提供だけでなく、対策効果を体験してもらうような機会の創出も重要であることが示唆されたことは、今後の獣害対策の支援のあり方を検討する際に有用な成果となる。
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