本研究では、地域特性の地域間の相違が、一般廃棄物処理サービスにおける広域化・大規模化の有効性に影響を与える可能性に対して、「全国の市町村を対象とした計量分析」と「離島の存在という地域特性に注目した沖縄地域のケース・スタディ」の両面から数量的検証を行っている。 地域特性要因を組み入れた費用関数の推定では、地域特性を示す「可住地面積比率要因」と「離島人口比率要因」が費用を押し上げ、一般廃棄物処理サービスの非効率性につながることを示した。特に、離島における非効率性には、地理的制約に起因するものと、不適切な施設整備といった政策的妥当性を欠くことに起因するものとが存在している。さらに、焼却施設の規模の検証では、トンあたり建設費を最小にする施設規模が概ね300トン/日であることが明らかになった。 八重山・宮古地域のケース・スタディでは、特に、離島が点在する竹富町の収集費用が大きく、焼却・埋立に至る全般の過程は規模の経済が働かず、生産性が低い可能性が示唆された。そこで、ヒアリングと未公表資料をもとに、海上輸送を有効に活用し、石垣市と竹富町の共同処理方式に移行する広域化・大規模化の効果を仮想計算した結果、石垣市の費用負担への影響は小さく、竹富町ではより大きな費用縮減効果があり、また、宮古島市の合併前後に着目した共同処理への移行に伴う効果の検証でも、処理費用が大きく低下している実態を明らかにした。 離島の存在という地域特性にあって、計量分析とケース・スタディの両面から、広域化・大規模化が生産性向上の有効な政策手段となり得ることを数量的に示唆できた意義は大きい。そして、島嶼地域のように、地理的に不利と考えられがちで、財政制約も大きい地域でも、地理的制約に合った政策をいかに展開し、「最少の費用で最大の効果」を実現していくか、という生産主体としての地方団体の手腕が問われていると言えるだろう。
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