本研究の目的は、環境配慮型投資信託に組み入れられている企業と、組み入れられていない企業のパフォーマンスを、生産性という観点から比較することである。平成20年度は、平成19年度に収集したデータをもとに、Data Envelopment Analysisという手法を用いて、効率性スコアの測定を行った。本研究では、窯業土石産業に属する企業を対象とし、インプットとして、労働者数・資本ストック・原材料、アウトプットとしては売上高のみを用いるモデルと、売上高及び温室効果ガス排出量を用いるモデルの両方を測定した。また、日本の代表的な環境配慮型投資信託をふたつとりあげ、それぞれ投資信託に組み入れられている企業と、そうでない企業について効率性スコアを比較すると、次のような結果が得られた。 ふたつの環境配慮型投資信託に組み入れられている企業は、組み入れられていない企業と比べると、 1. 経済パフォーマンスが高い。 2. 温室効果ガスの削減と、売り上げの増加に関して、バランス良く取り組んでいる。 これまで、環境配慮型投資信託と、従来の投資信託のパフォーマンスを比べる研究はあったが、対象企業に焦点を当てた研究がなかった。これまで環境配慮型投資信託は「分かりにくい」という不満が投資家から寄せられていたため、本研究の成果は、その情報不足解消に貢献できるものと考えられる。今後の課題としてはサンプルサイズを大きくすることが考えられる。
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