FOXラインはある遺伝子の機能が増強された変異体のプールであり、ここから得られる変異体は優性の表現型を示すので選抜に有利である。本研究ではFOXラインを用いて、紫外線耐性をもたらす遺伝子の探索を行う事を目的とし、新規のスクリーニング法を考案した。このスクリーニング法は96穴プレートで直接植物を生育させ、プレートリーダで蛍光強度を測定する事により、本葉の紫外線吸収色素の含量を速やかに測定するものである。 本年度は本スクリーニング法を用いて、紫外線吸収色素が野生型よりも高蓄積する幾つかの変異体の単離に成功した。現在、単離した変異体の一つについて解析を行っている。当該の変異体は紫外線照射による光合成量子収率の低下が野生型よりも遅く、DNAにシクロブタン・ピリミジンダイマーが産生される頻度も低いなど、紫外線耐性の表現型を示した。また紫外線照射に対する紫外線吸収色素量の変化を確認したところ、野生型よりも変異体の色素増加量が多い事が判明した。そこで代表的なフラボノイドなど二次代謝産物の合成酵素遺伝子の転写量を確認したところ、CHS、 PAL1、 C4H、 CHI、で紫外線照射後の転写産物量が野生型よりも多かった。これらの事から、前述した変異体の表現型の原因遺伝子は、紫外線照射による色素量の増加を転写レベルで制御し、紫外線に対する防御応答の一端を担っている因子であると考えられる。現在、この変異体に導入されているcDNAの同定を行っているところである。cDNAの同定が済み次第、更なる詳細な解析、及び原因遺伝子のノックアウト株の表現型を確認する予定である。
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