FOXラインはある遺伝子の機能を増強した変異体系統群であり、得られる変異体の表現型は基本的に優性である事など選抜に有利な点が幾つもある。本研究ではこのFOXラインを用いて、紫外線耐性をもたらす有用遺伝子の探索を行う事を目的としている。本年度はこの目的に関連して、イネFOXラインより単離された異常な紫外線応答を示す変異体の解析を行った。イネFOXラインとはイネの完全長cDNAをシロイヌナズナで過剰発現させた変異体系統群である。この変異体は微弱紫外線で胚軸が極端に短くなり、更に微弱紫外線特異的に胚軸のねじれが観察される。単離されたイネcDNAはイネ特異的タンパク質であったため、シロイヌナズナでの作用機構を調査するため、酵母two-hybridシステムを利用してイネFOX系統内で相互作用しているタンパク質の単離を目指した。その結果、100以上の候補クローンを得る事に成功した。単離したクローンについては青白選抜を行い、更にクローンの絞り込み作業を行った。加えて単離したcDNAのイネ過剰発現体の作成を試み、10以上の形質転換体を得た。これら過剰発現体より、紫外線に対する応答や紫外線耐性について観察するための次世代種子を採取した。 また本年度は紫外線応答に関わる新たな因子の探索を目指して、白色光と弱紫外線の同時照射条件で野生型よりも紫外線に敏感に反応する変異体の選抜方法を検討した。具体的には紫外線特異的な胚軸伸長の抑制が亢進した変異体を得るための条件検討を行った。決定した条件によってFOXラインの選抜を行ったところ、紫外線特異的に胚軸伸長の抑制が亢進される変異体を1系統単離し、変異体に導入されているcDNAの決定に成功した。導入されていたcDNAは新規のリン酸化酵素をコードしていた。
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