研究概要 |
本研究の目的は,様々なDNA付加体をヒトTK6細胞のゲノム内で解析するために,まず代表的なDNA付加体である8-オキソグアニンを1つ含むターゲティングベクターを作製することから始め,「ゲノム内」における8-オキソグアニンの突然変異誘発頻度とスペクトルを解析できる実験系を確立することである。初年度は,8-オキソグアニンを部位特異的に挿入させた6.1kbpターゲティングベクターを効率よく合成できる系を確立した。この系は,8-オキソグアニンだけでなく他のDNA付加体も挿入させることが可能で,これまで報告されている合成系と異なり,二本鎖DNAの両鎖に自由にDNA付加体を複数挿入させることができる。最終年度は,チミジンキナーゼ遺伝子(TK)を指標とした復帰突然変異試験系(8-オキソグアニンがアデニンと誤塩基対形成した時に復帰)を確立した。さらに,ゲノム内における8-オキソグアニンの突然変異誘発スペクトルを解析できる実験系も確立した。8-オキソグアニンを導入した時のTK復帰細胞の出現頻度は,グアニン(陰性対照)を導入した時と比べ,約19%増加した。これは,正常塩基であるグアニンはシトシン(復帰細胞は得られない)とだけ塩基対形成するのに対し,8-オキソグアニンはシトシンだけでなく,約19%の頻度でアデニン(復帰細胞が得られる)とも誤塩基対形成したことを示している。また,イントロン内に導入させた8-オキソグアニン部位を調べるとチミン(約15%)あるいはアデニン(約3%)に変異していた。現在,本研究によって確立された実験系の信憑性や再現性について調べている。
|